人生初の造園家とのコラボレーションで感じたこと(2)
印象に残った後半3つをご紹介したいと思います。
3.現場を観て、顧客の要望を聴き、適切だと判断した変更は迅速に取り入れる
造園を進める中で、当初の提案に対して幾つも変更を盛り込んでいただきました。ウッドデッキの大きさや細かな形状、庭に用いる素材、そして、小川を創ることなどインパクトは様々ですが、いずれのケースでも私の要望をしっかりと受け止め、適切な判断のもと、迅速に変更を重ねていただきました。
例えば庭に用いる素材として、当初より門柱やウッドデッキ周辺の一部に枕木が含まれていました。私は、枕木について全く知識も興味もなかったのですが、門柱用に一本の立派な枕木が立った時点で枕木について興味が湧き、色々と調べてみました。その結果、枕木に防腐剤として用いられてきたクレオソート油に関する有害性の記載が多く目に留まり気になってしまいました。クレオソート油は、発がん性や異臭の懸念があると言われます。
それで、正直にその懸念について造園家に相談しました。造園家曰く、枕木は、木の質感、色、加工のし易さなどの特徴を活かして、多くの造園で用いられているとのことです。石を多く用いる雑木の庭でも、石だらけでは硬くなる空間に柔らかな変化を醸し出す目的で枕木が多く用いられ、この造園家が過去に手掛けた8割の庭で枕木を用いてきたとのことでした。
でも、私の懸念を正面から受け取ってくださり、苦労して門柱用に枕木を立てた直後にも関わらず、『今回は枕木を用いるのは止めましょう』、と即決してくださったのです。私が、今年誕生した孫をこの庭で遊ばせることを楽しみにしていることを知っていて、『お孫さんのためにも100%安心できる庭にしましょう』、と言ってくださいました。この対応は、造園家の心意気が私の心に深く刻まれた出来事になりました。
4.変更をポジティブに捉え、より良い結果につなげていく
ウッドデッキの大きさや細かな形状、枕木の使用を見送ること、そして、小川を造ることなど、私の要望を受け入れ変更していただくことに感謝するとともに、私が造園家に対して素敵なマインドだなと感じた点があります。それは、変更箇所に関して、造園家が、『変更して結果的に良かった』 という言葉を何度も言われたことでした。
枕木の時のように、変更には作業が伴うことが含まれていたにも関わらず、変更をポジティブに捉え、より良い結果につなげていくマインドは、私が大切にしている神経心理学であるNLP(Neuro Linguistic Programming)の考え方に通じるものがあります。
私たちは、日々、色々な判断をしながら生きています。判断が正しいか誤っているかは、その時点では分からない。私たち自身が判断をポジティブに捉え、より良い結果につなげていくからこそ、その判断が自身にとって正しい判断になるのだと私は信じています。造園家が、『変更して結果的に良かった』 と言葉にする行為は、まさに、更に良いものを創り上げていく原動力のように感じられました。
『中条さんも自分も、少しでも心地よい庭にしようという共通の目的があるからこそ、お互いの意見が尊重できるし、結果的により良い庭が出来ているのだと思う』、と造園家に言われ、お互いがそのように感じているからこそ素敵なコラボレーションができているのだな、と納得した次第です。
5.ストーリー性を考え、取り入れる
私たちの人生においても、会社を経営していく上でもストーリー性は大切ですよね。ストーリーがあるからこそ、考え方や行動に一貫性や納得感が生まれ、自分自身にも他者にも考え方が伝わるのだと思います。今回の庭を創る上でも、造園家はストーリー性を大切にされていました。
雑木の庭は、風景写真を飾るプライベートギャラリーの庭として造っています。造園家に庭を造っていただくにあたり、プライベートギャラリーを見ていただきました。ギャラリーに展示されている風景写真のコンセプトを雑木の庭にも反映してくださった上で、下記のストーリー性を提示してくださいました。
①ギャラリーを訪れた方を、主庭で山に来たような雰囲気でお出迎え
②玄関を入り、坪庭で主庭とは対極の標高が高めな空間を味わい
③ギャラリーで写真を見て、標高が高い場所の渓流や海などの実際の風景を味わう
④リビングに移動して、庭に創った水源からの流れで山の中のオアシスの開けた空間へ誘う
良い仕事をする人は、単に仕事をこなすだけでなく、やはり、そこにはストーリー性を大切にする姿勢があるのだということを今回のコラボレーションを通じて強く感じさせられました。
kaoru.chujo@sowinsight.com (中条 薫)