木は一本で育つのではない、複数の木々が支え合って育つ

三浦半島に移住して、10年が経ちました。これまでの人生を振り返ると、転機になったり大きな影響を受けた出来事が幾つかありましたが、三浦半島に移住したこともその一つです。人生がとても豊かになりました。
人生が豊かになったと感じる要因はいくつかあるのですが、その一つが三浦半島の豊かな自然に魅了され、それがきっかけとなり植物に興味を惹かれるようになって、結果としてガーデニングが趣味になったことなのです。
10年前に家を建てた時にはこれほど植物が好きになるとは予想していませんでしたが、それでも庭に植えたい木を何種類か選び造園業者さんに植えてもらいました。でも、残念ながら上手く育ちませんでした。当時は周辺にさほど家が建っていなかったこともあり、海風が強く木々に当たる厳しい環境だったのです。この土地にさほど詳しくない造園業者さんにお願いしてしまったこともあり、環境に合った植栽になっていなかったということが後になって判りました。
徐々に植物に気持ちが惹かれる中で、なんとかしたいと思うようになり、この土地に詳しい葉山の造園業者さんに庭を作り変えてもらうことにしました。私の希望を取り入れながらも木々に優しい環境を作っていただき、木々は徐々にこの環境に馴染み、順調に成長するように大きく変わりました。この庭の作り変えのお蔭で私は益々ガーデニングに夢中になったのですが、造園業者さんに教えていただいて強く心に残っている言葉があります。
『木は一本で育つのではありません。複数の木々が支え合って育つのです。だから、特に、海風の当たるこのような厳しい環境に一本だけポツンと木を植えてはだめなのです。特徴の異なる複数の木々を寄せて植えてあげることで、それぞれの木々が支え合い成長していくのですよ。』
潮風に強い木や強風にも耐えられる木を上手く配置して、私の好みの木を守るように寄せ植えしていただいた結果、庭の木々が見違えるように成長してくれるようになりました。私は、ガーデニングを通じて生き物に共通する大切な考え方の多くを学ばせてもらっていますが、この考え方と経験はとても心に沁みました。植物も人間も全く一緒なんだな、と。誰しも強みと弱みをもっているけれど、それを上手く組み合わせることで、たとえ環境が厳しくても、そこで大きな何かを生み出していけるのだということをガーデニングを通じて教わった気がします。
kaoru.chujo@sowinsight.com (中条 薫)